コルセットの基礎知識

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このページではコルセットの構造、サイズ、お手入れ方法その他について簡単にまとめてあります。
コルセットを試してみたいがそもそもコルセットがどういうものが良く分からない、巷で売っている安いコルセットと高いコルセットの違いが分からない、 腰痛だけどどうせなら綺麗なコルセットをつけたいが大丈夫か、等々の疑問があればご参考にしてください。

コルセットの構造

コルセットというと、湾曲した鉄の棒でフォルムを作り、その上に布が被さっている、というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、フォルムを形作るのは絶妙に裁断・縫製された生地(布・革等)で、鉄の棒に当たるボーンはそれを支えて強度を高めるための役割しか果たしていません。この点を理解しておりませんと、どんなきついコルセットでも着れるし、着ればウエストを細くできる、と誤解してしまいます。
そんな誤解から無駄なお買い物をして後悔なさらないように、以下コルセットとはどういうものか順をおってご説明します。

コルセットは、外側に見えるアウター、身体に接する内張り(インナー)、アウターとインナーの間にある構造体の3重構造でできています。インナーはどのコルセットもコットンを使っています。
下図-IはBlack Irisのコルセットの構造説明図で、コルセットの一般的な構造がよく分かります。


図-I Black Iris社のコルセットの構造

たいていのコルセットは、ウエスト部分を補強するテープと内部の布とで構造体を作り、その内側に内張りが、外側にアウターが貼り付けられいます。内張りも内部の布も丈夫なコットンです。コルセットの構造体はほとんど外から見えないのですが、下図-IIのメッシュコルセットを見るとよくわかります。


図-II Orchard Corset C411メッシュ

フロントと背面の両端は、フロントはフックで、背部は紐で閉じるため、どちらにも非常に強い力がかかります。そのためバスクと呼ばれる丈夫な金属板で作られ、しっかり縫製されています。
バスクは丈夫ですが、コルセットを締めると、平でまっすぐな金属板が捻じれて湾曲し、布部分にも不自然な負荷がかかります。異常に強い力で締めると、金属が布を裂くような状態になり、結果として布が破れてしまうこともあります。
布の損壊は「締めすぎないこと」以外に防ぎようがありませんが、体型に合ったコルセットを選べば無理な力もかけずに済みます(体形に合ったコルセットの選び方」参照)。


紐を締めた状態で背部両端のラインが平行になるのが理想

ボーン(bones)はコルセットの中に縦に入っている文字通り「骨」のことで、コルセットはこのボーンによって型崩れしないようにできています。
ボーンはまっすぐなもので、 図-Iのように袋状の中にボーンが入ることによって、各部位のデザインに沿って湾曲します。けっして最初から湾曲したデザインのものが入っているわけではありません。冒頭に書きましたように、体型を矯正するのはあくまでも生地でできた構造体で、ボーンはそれを支え・強度を高めるのが役割です。

普通は1本単位ですが、2本1組で強度を高めているものもあります。これをdouble bonedと呼びます。double boneは必ずスパイラルボーンが使われています。

ボーンの素材には、スチール製、ステンレス製があり(チープ品ではプラスチック製もあります)、さらに下図-IIIのように平らな板状(フラットボーン)と螺旋形のばね状(スパイラルボーン)などがあります。
フラットボーンは、強く型崩れせず本数も少なくて済むのが利点ですが、数が多いと少し重くなるのが難点で、最近は軽いスパイラルボーンとの組み合わせが増えています。
スパイラルボーンは柔軟でフィットしやすいのですが、体型に合っていないとぐにゃぐにゃして着用すらできないこともあるのが難点です。

フラットボーン

スパイラルボーン

図-III (資料:Corset Queen)

コルセットのサイズについて

【ウエストサイズ】
コルセットのウエストサイズは、国際標準で2インチ単位で表示されます。18インチ〜32インチが標準的で、34インチ以上はプラス料金、という価格設定が多く見られます。
1インチは約2.54cmですので、cm換算するときは2.5倍にするとよいでしょう。たとえば20インチは50cm、30インチは75cmとなります。2.54倍で計算すると、10インチで0.4cmの差で、30インチなら76.2cmとなります。1センチ程の差がありますが、後述のように気にすることはありません。

意外といい加減?なコルセットサイズ
コルセットは多数のパネルを組み合わせ、その中に金属の棒を何本も入れて強化して、という複雑な作りで、かつすべて手作業での縫製ですので、同じ商品でも結構な誤差があります。実際にコルセット手にしてみると、どこが一番細い部分なのか、内側サイズをどうやって正確に測る云々、かなり難しいことが分かります。もともとウエスト実測サイズより10cm以上小さいサイズを選ぶことを前提としていますので、1〜2cm程度の誤差は何の問題もありません。なお、コルセット選びの鉄則は「迷ったら小さいサイズ、小は大を兼ねる」です。

【コルセットの丈のサイズ】
コルセットの丈のサイズを表すとき、フロント(front)=正面の一番上からボトムまで、サイド(side)=わきの下からボトムまで、バック(back)=背部の上からボトムまで、で表します。コルセット選びでやはり一番参考にすべきはフロントサイズです。
なお、コルセットは丈の長さに応じて、ショート、普通のサイズ、ロングライン、ロングタイプなどありますので、詳しくは「最適なコルセットサイズの選び方」の「胴の長さとコルセットの長さ」をご覧ください。

【アンダーバストとヒップサイズ】
例えばアンダーバストのサイズ75cmの人が同80cmのコルセットを着けたら、胸の下がガバガバで用を為しません。これほど極端でなくても、それに近いサイズ間違いはよくあることです。
実はコルセットのスペックにアンダーバストとヒップサイズまで記載しているメーカーは少なく、多くは「ウエストサイズに対して何インチ大きいか」 を記載しています。サイズ選びのときは、その数字を基に自分で計算しなくてはなりません。
アンダーバストウエストサイズの差はRib Spring、 同じくヒップサイズはHip Springといいます。当店ではカタログに記載がある商品についてはcm換算して記載しています。アンダーバスト、ヒップともに実測サイズよりずっと小さいサイズを選んでください。
詳しくは「最適なコルセットサイズの選び方」の「体型(プロポーション)とコルセットの形」をご覧ください。

素材について

肌に触れるインナーはすべて綿で、オーガニックコットンをオプションで選べるメーカーもあります。アウターは布製、革製からPVCまで様々な素材が使用されます。

【布製コルセット】
コットン/ウール以外はポリエステル繊維です。本物のシルク素材は非常に高価で、オーダーメイドのお店でしか扱っていません。
サテンのように艶やかな素材、錦織(Brocade)のように光の当たり具合で色が変化するもの、模様を織り込んだものなど、さまざま織り方の布等々があります。ご興味のある方はネットでチェックしてみてください。
布素材は選択肢が多いので、お好みのものが必ず見つかるでしょう。なお布製は多少のやぶれ程度なら自分で修理できます。

Satin(本繻子,サテン)


Brocade (錦織)


Jacquard(模様を織り込んだ素材)

【革製コルセット】
革製コルセットは丈夫で、擦れにも強く、多少傷ついても気にせず着用できるのが長所です。ただし破れてきたときなど補修は難しいです。
ブラックのものが多いためか、ボンディズムやSMなどの雰囲気で見られがちですが、海外ではごくごく普通に使われる素材です。
ラムなどの柔らかい革が使われますが、商品によってはゴツゴツしたカバンのような素材を敢えて使っているものもあります。

革製コルセット一覧

【メッシュコルセット】
空気の通りの良い網タイプの布(メッシュ)コルセットで、アウターと構造体だけで作られています。メッシュコルセットは涼しいので夏はもちろん、それ以外の季節でも長時間着用には重宝します。
一枚布のメッシュ生地の強度を保つため、丈夫な繊維と補強された構造体で堅牢さを担保しています。

メッシュコルセット一覧

【PVC製コルセット】
ビニールのようなテカテカ光る素材で、ステージ衣装など人に見せるための素材と言ってよいでしょう。

PVCコルセット一覧

コルセットのお手入れ方法

コルセットは下着や衣類の上から着ても、かなり汗を吸っています。外したら良く乾かすようにしてください。普段のお手入れは、乾燥とホコリを払うぐらいで十分です。
汚れが気になるようでしたら、クリーニング店に相談してドライクリーニングしてください。
自宅での手洗いは、生地の縮みやボーンの錆びなどの問題がありますので避けてください。どうしても洗いたいときは、可能な限り早く乾燥させてください。オーバーバストのカップ部分のように型崩れしやすいところはアイロンで整えます。
革製コルセットは長期間使っているうちに油分が抜けて、表面が固い感じになることがあります。一つのコルセットをそこまで使いこむのは珍しいと思いますが、放っておくとひび割れしますので、シミにならないか確認してから、靴クリームなどで拭いて保湿します。

ファッションコルセット

番外編ですが、当店などのコルセット専門店のコルセットは、ランジェリーショップ等で売られているものと比べると、法外に高い値段がついています。その理由は「本格コルセット(authentic corset)」だからです。上述のように丈夫な素材と作りで、お値段もそれなりします。
ネット上で数千円程度で販売されているコルセットは、デザインだけ欧米の一流ブランドを真似て作ったチープ品で、海外では「ファッションコルセット」と呼ばれています。ボーンもプラスチックや細いスチール製がほとんどです。
ファッションで着るには安くて良さそうですが、サイズの問題があり、あまりお奨めできません。
まず、ファッションコルセットでは、「ウエスト〇cm〜〇cmの方にはSサイズ」と推奨サイズだけ記載されていることがほとんどで、そのコルセットが何インチ/センチなのか分かりません(国際標準は2インチ単位)。
さらに困るのが、元々大柄な欧米人向けなので、Mサイズでも男性か、よほど大柄な女性でないと着れません。普通サイズの日本人女性が着れるのはXSかせいぜいSぐらいです。
スペックをみると本格コルセット並みで、しかも数千円で販売されている商品もあります。短期的な使用ならいけるでしょうが、長く使うのは難しいでしょう。

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